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2025.10.17
RFIDコラム

コンビニで進むRFID活用とは?仕組み・効果・導入の課題をわかりやすく解説


なぜ今、コンビニでRFIDが注目されているのか?

人手不足・廃棄ロス・万引き対策など業界課題

コンビニエンスストア業界では現在、慢性的な人手不足が深刻な課題となっています。とくに深夜帯や地方店舗では、従業員の確保が難しく、限られた人員での店舗運営を余儀なくされています。その結果、検品や棚卸、商品補充といった日常業務にかかる負担が増大し、業務の効率化が強く求められています。

さらに、賞味期限切れ商品の廃棄(いわゆる「フードロス」)や、万引き・不正会計といった損失リスクもコンビニ特有の問題として存在します。これらの課題に対応するため、現場では「在庫の見える化」や「作業の省人化」を実現する新しい手段が求められています。

こうした背景のもとで、RFIDは、人の目や手作業に依存せず、商品を一括で読み取れる仕組みとして注目を集めています。これまでアパレルや物流業界で先行して普及してきたRFIDが、いよいよコンビニという日常生活に密着した現場でも活用を検討され始めているのです。

経済産業省が主導した「2025年完全RFID化構想」

RFID活用が加速した背景には、国の後押しも大きく関係しています。2017年、経済産業省は大手コンビニ各社とともに「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を発表し、2025年までにすべてのコンビニ商品にRFIDを貼付するという目標を掲げました。これは、レジの省人化や棚卸・検品の自動化によって、次世代型のスマート店舗を実現することを目的とした構想です。

この構想のもと、セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートといった大手各社が実証実験やPoC(試験導入)を重ね、RFIDの導入可否やコスト・運用課題の洗い出しを進めてきました。実際には、当初想定されていた「2025年完全導入」のハードルは高く、スケジュールの見直しが行われている状況ではありますが、業界全体としてRFID技術への期待は継続しています。

このように、業界の構造的課題と政策的な推進の両面から、RFIDはコンビニの業務改革を担う重要なテクノロジーとして、今あらためて注目を集めているのです。


RFIDを使うとコンビニ業務はどう変わる?

検品・棚卸の効率化と省人化

RFIDの導入によって、日々の検品や棚卸作業は大きく変わります。従来のバーコード方式では、商品を1点ずつスキャンする必要があり、作業に時間と人手がかかっていました。一方、RFIDタグが貼付された商品であれば、リーダーをかざすだけで複数の商品情報を一括で読み取ることが可能です。

この仕組みによって、検品や棚卸にかかる時間は大幅に短縮されます。実証実験では、棚卸時間が従来の10分の1にまで短縮された例もあり、特に深夜帯や人手が限られる店舗での省人化に寄与しています。また、読み取り漏れやスキャンミスといった人的エラーも軽減され、作業品質の向上にもつながります。

リアルタイム在庫管理・商品トレーサビリティの実現

RFIDを活用することで、店舗内の在庫情報をリアルタイムで把握できるようになります。たとえば、商品の入荷から陳列、販売、廃棄に至るまでの各プロセスでタグ情報を記録しておけば、どの商品がいつどこにあったのかを正確に追跡できます。これにより、売り場での欠品防止や発注ミスの削減、フードロスの抑制にもつながります。

また、異物混入や品質問題などが発生した際にも、対象商品の流通履歴を即座に確認できるため、迅速な対応が可能になります。こうした商品トレーサビリティの強化は、消費者への信頼性向上にも貢献します。

防犯・セルフ会計・非対面サービスとの連携

RFIDは防犯対策としての有効性も注目されています。タグによるリアルタイム検知が可能になることで、未会計商品の持ち出し検知や不正会計の抑止につながります。また、セルフレジやモバイル決済端末と連携させれば、複数商品を一度に読み取り、会計時間の短縮を図ることも可能です。

さらに、非対面サービスの普及が進む中で、RFIDは「レジを通らない買い物体験」を支える技術としても期待されています。たとえば、無人店舗やスマート冷蔵庫などの新しい店舗モデルでは、RFIDタグが顧客の行動と商品情報を自動的にひもづけ、会計を完了させる仕組みが導入され始めています。


導入に立ちはだかる課題とは?

RFIDタグのコストと製品管理の現実

RFIDの活用には多くの利点がありますが、最も大きな課題の一つがタグそのもののコストです。RFIDタグはバーコードに比べて単価が高く、とくに低価格帯の商品が多いコンビニにおいては、1点あたり数円〜十数円のコスト増が経営に影響を与える可能性があります。タグ価格が下がってきているとはいえ、大量の商品に貼付するとなると無視できない負担です。

さらに、商品にRFIDタグをどの段階で貼り付けるかも重要な検討項目です。製造元で貼付するのか、物流拠点か、あるいは店舗での対応となるのかによって、必要な設備や作業手順が大きく異なります。全体最適を考慮した導入設計が求められる場面です。

店舗設備や既存システムとの整合性

RFIDリーダーやアンテナの設置には、一定のスペースや電源確保、通信環境などのインフラが必要です。コンビニは限られた空間で多くの商品を取り扱うため、新たな機器を設置する余裕がない店舗も多く、物理的制約が導入の障壁になることがあります。

また、既存のPOSシステムや在庫管理システムとの連携も避けては通れない課題です。RFIDを導入することで得られる情報を正しく取り込み、活用できる体制が整っていなければ、せっかくの投資も十分な効果を発揮できません。システム改修やデータ連携の対応範囲を事前に把握しておくことが重要です。

現場スタッフの負荷・運用教育の壁

新しい技術の導入には、現場スタッフの理解と習熟が欠かせません。とくにRFIDは、読み取り機器の取り扱いや、タグが正常に読み取れなかった場合の対応など、基本的な運用知識が求められます。

しかし、コンビニ店舗ではアルバイトスタッフや外国籍スタッフの割合が高く、頻繁に人の入れ替わりがあるため、教育や引き継ぎの手間が発生しやすい傾向にあります。マニュアル整備やOJTの工夫が必要となる一方で、現場の負担増を懸念する声も少なくありません。

これらの課題を乗り越えるには、単なる技術導入にとどまらず、運用フローや組織体制を含めた全体最適の視点が求められます。


過去の実証実験から見えた課題と成果

IoT連携によるフードロス削減の取り組み

コンビニ業界では、RFIDを活用したIoT連携の実証実験が行われてきました。代表的な例としては、RFIDタグを活用して商品の販売期限や在庫状況をリアルタイムで管理し、フードロス削減に取り組むプロジェクトがあります。

たとえば、ある大手コンビニチェーンでは、RFIDタグに記録された賞味期限情報を読み取り、在庫システムと連動させることで、期限が迫っている商品を自動的に割引対象として登録する実験を実施しました。その結果、廃棄される商品の削減につながっただけでなく、作業の効率化やスタッフの負担軽減にも一定の成果が得られました。

このような事例から、RFIDは単なる「読み取り」技術にとどまらず、IoTやデータ活用と組み合わせることで、業務全体の最適化にも寄与しうることがわかります。

棚卸時間の短縮や精度向上の実例

別の実証実験では、店舗内の商品にRFIDタグを貼付し、棚卸作業の効率を検証する取り組みが行われました。従来、1〜2時間かかっていた棚卸作業が、RFIDリーダーを使って数分で完了したという結果も報告されています。

このように、一括読み取り機能によって作業時間の短縮が可能になるだけでなく、人的ミスの削減や在庫情報の精度向上も実現しています。結果として、発注精度の改善や欠品防止にもつながり、店舗運営全体の効率化が期待できる技術として評価されています。

普及が進まなかった理由とは何か?

一方で、こうした成果が確認されながらも、RFIDの本格的な普及には至っていないのが現状です。その主な理由としては、コスト面や運用面の課題が根強く残っていることが挙げられます。とくに、すべての商品にタグを貼付するためには、サプライチェーン全体の協力が必要であり、メーカーや物流業者との連携が不可欠です。

また、PoCでは成果が出ても、全国規模での展開には膨大なコストと調整作業が伴います。導入のメリットが明確でも、それを実現するための環境が整っていなければ、導入判断は容易ではありません。

これらの背景から、RFID導入には一定の成果と可能性がある一方で、現場での実装にはまだ乗り越えるべき壁があることも実証実験を通じて明らかになっています。


コンビニへのRFID導入はどこまで進んでいるのか?

実際の導入状況と今後の展望

日本のコンビニで全面的にRFIDを導入している実績はありません。実験中、検討中といったフェーズに留まっていますが、経済産業省が主導したコンビニ実証実験では、セルフレジと連動したRFIDシステムの試みも見られました。都市部の旗艦店舗陶では、混雑緩和や会計の効率化が期待されています。

RFIDの全面的な展開にはコストやインフラ整備、サプライチェーンの体制づくりといった課題が残されています。経済産業省が掲げた「2025年までにコンビニ商品へ全面導入」という構想も、スケジュールの見直しが続いており、段階的な導入が現実的と見られています。

ただし、RFIDタグの価格が徐々に下がり、読み取り精度や運用ノウハウが蓄積されるにつれて、導入のハードルは確実に下がってきています。今後は、特定カテゴリの商品や特定エリアの店舗から部分的に導入を進め、効果を検証しながら拡大していく方式が主流となると考えられます。

海外の小売チェーンとの比較

海外では、RFIDの導入が日本よりも一歩先を行っている事例が多く見られます。とくに欧米のアパレル業界では、在庫の可視化や販売動向の把握を目的としてRFIDの活用が広く進んでいます。スーパーマーケット業界では、例えばウォルマートは、アパレル製品以外のカテゴリーにもRFIDを進めており、全商品へのRFIDタグ装着を目指しています。

また、欧米や中国では無人店舗の開発が活発であり、RFIDを活用したスマートシェルフや自動決済システムの導入も進んでいます。これらの先行事例は、RFIDが単なる在庫管理ツールにとどまらず、店舗運営全体の効率化・無人化を支えるインフラ技術として位置づけられていることを示しています。

日本においても、こうした事例を参考にしつつ、自国の流通構造や消費者の購買行動に適したRFIDの活用方法が模索されつつあります。国内の技術力と現場対応力を活かしながら、段階的に導入が進んでいくことが期待されます。


まとめ|コンビニ業務の最適化にRFIDは不可欠?

業務課題との相性が導入成功の鍵

RFIDは、検品・棚卸の効率化や在庫の可視化、さらには防犯や非対面会計の実現など、コンビニ業務のさまざまな課題に対して有効な解決手段となります。ただし、導入効果を最大化するためには、自社の店舗運営や業務フローと技術の相性を見極めることが欠かせません。

すべての店舗や商品に一律で適用するのではなく、まずは業務負荷が高い作業や、廃棄・損失リスクの大きい商品カテゴリなど、課題が顕在化している部分から優先的に導入を検討することが現実的です。RFIDは目的なく導入しても十分な効果が得られにくいため、現場の課題と導入の目的を明確にすることが導入成功の第一歩となります。

費用対効果を見極め、段階的な導入も視野に

タグやシステムの導入コスト、設備工事や教育研修など、RFID活用には初期費用や運用面でのハードルがあるのも事実です。しかし、タグ価格の低下やリーダー機器の高性能化が進むなかで、段階的な導入や特定業務への適用から始めるアプローチも現実的な選択肢となっています。

たとえば、棚卸の簡素化を目的とした部分導入や、フードロスが問題となっている商品のみへのタグ付与など、小規模な実証を通じて効果を検証しながら、徐々に対象範囲を広げていく手法が有効です。こうした段階的導入は、現場の負担を抑えながらRFID活用のノウハウを蓄積し、長期的な業務最適化につなげる上でも有効といえるでしょう。

RFIDは、単なる技術導入ではなく、業務全体の再設計や業界構造の変革とも深く関わるテーマです。いま求められているのは、現場目線での実現可能なアプローチと、将来を見据えた投資判断です。コンビニ業務の効率化・高度化に向けて、RFIDが果たす役割はこれからさらに広がっていくと考えられます。

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