
RFIDの「周波数帯」とは?
電波を使って通信する仕組み
RFID(Radio Frequency Identification)は、電波を使って非接触で情報の読み取りや書き込みを行う技術です。読み取り装置であるリーダーから電波が送信され、その電波を受信したICタグが応答することで、データの送受信が行われます。人の手による操作や目視確認を必要としないため、作業の省力化や処理速度の向上につながります。
このとき使用される「周波数帯」は、RFIDの通信特性を左右する重要な要素です。通信可能な距離や読み取り精度だけでなく、タグの構造やサイズ、さらには導入コストにも影響を与えます。そのため、RFIDを選定する際には、単に機器の性能を見るだけでなく、どの周波数帯が使われているかを理解することが欠かせません。
周波数が通信距離や用途に与える影響
RFIDに用いられる主な周波数帯は、LF(低周波)・HF(高周波)・UHF(超高周波)の3つに大別されます。これらは周波数の違いによって、通信距離や読み取り方式、適した利用シーンが大きく異なります。
それぞれの周波数帯は、通信距離に影響を与えるだけでなく、電波干渉への強さや、読み取る対象物との相性にも差があります。たとえば金属や水分が多い環境ではUHF帯が影響を受けやすい一方、LF帯は比較的安定した通信が可能です。こうした特性を踏まえ、使用環境や業務内容に応じて周波数帯を選ぶことが、RFID導入の成否を左右する重要なポイントとなります。
周波数別|RFIDの3つの帯域の特徴
LF帯(125kHz~134kHz):安定性重視の近距離通信
LF帯は、低周波(Low Frequency)に分類される125~134kHz程度の帯域を使用します。読み取り距離は数cm~数10cmと短めですが、金属や水といった周囲環境の影響を受けにくいという特長があります。
そのため、動物の個体識別用チップや、自動車のイモビライザー、工場の製造ラインなど、安定性が重視される用途に適しています。通信速度は遅めですが、読み取り信頼性が高く、RFIDの黎明期から広く使われてきた周波数帯です。
HF帯(13.56MHz):汎用性の高い中距離通信
HF帯は、高周波(High Frequency)に分類され、13.56MHzの単一帯域が国際的に標準化されています。読み取り距離は10cm~1m程度で、通信速度はLFより速く、データ容量のやり取りにも向いています。
SuicaやPASMOなどの交通系ICカード、図書館の貸出管理、工場の工程管理など、多くの業種で活用されています。また、電磁誘導方式により電源が不要なパッシブタグが利用可能で、タグの小型化も進んでいます。
金属や液体の影響を受けやすい点はありますが、通信の安定性と国際的な普及実績から、多くのRFIDシステムで採用されています。
UHF帯(860MHz~960MHz):長距離かつ高速な一括読み取り
UHF帯(Ultra High Frequency)は、860MHz~960MHzの帯域を使用し、読み取り距離は最大10m程度と長距離通信が可能です。電波を広範囲に飛ばせるため、複数のタグを同時に読み取る一括読み取りに適しており、物流・倉庫業務や入出荷管理、アパレルの在庫管理などに広く利用されています。
通信速度も速く、タグを移動させながらでも読み取り可能なため、自動化や効率化が求められる現場で効果を発揮します。
一方で、金属や水の影響を受けやすく、読み取り環境の調整が必要な点には注意が必要です。また、国によって利用可能な周波数が異なるため、国際展開を行う場合は対応帯域の確認が欠かせません。
周波数ごとの比較と選び方
通信距離/読み取り精度/干渉リスクの違い
LF・HF・UHFの各周波数帯は、それぞれ通信距離や読み取り精度、電波干渉の影響に差があります。LF帯は金属や水分の影響を受けにくく安定性が高い一方で、通信距離が短くなりがちです。HF帯は比較的広い範囲で安定した読み取りが可能で、交通ICカードや図書館など多用途に利用されています。
UHF帯は長距離かつ高速な一括読み取りが可能ですが、金属や水との干渉には注意が必要です。(干渉を抑える為、金属対応タグやリキッドラベルなどが使用されます)。
各帯域の特性を理解し、目的や設置環境に応じて使い分けることが重要です。
業界別に見る適した周波数帯の使い分け
物流や製造業では、作業効率を重視してUHF帯が選ばれるケースが多く、医療や図書館のような精度重視の現場ではHF帯が使われています(近年UHF帯の使用も増加傾向になります)。動物管理やアクセス制御など近距離で安定した通信が求められる分野では、LF帯が活躍します。
業界ごとのニーズを踏まえた周波数帯の選定が、導入効果を高めるポイントとなります。
利用目的に応じたタグ・リーダーの最適化
周波数帯の違いは、タグとリーダーの設計にも密接に関わります。例えば、UHF帯では一括読み取りのために複数アンテナを設置するケースもあり、現場の導線設計やレイアウトに配慮が必要です。一方、HF帯は読取精度が安定しており、電力消費や通信範囲をコントロールしやすいため、用途の幅が広いという利点があります。目的と環境に応じたタグ・リーダーの組み合わせは、読み取り精度や運用効率に大きく影響するため、PoC(試験導入)を通じた検証が推奨されます。
周波数帯の選定で気をつけるポイント
読み取り環境・リーダーとの相性・電波干渉の影響
RFIDの周波数帯を選定する際には、導入先の環境条件を正確に把握することが不可欠です。たとえば、金属棚や水分を含む製品が多い現場では、UHF帯では電波の反射や吸収によって読み取り精度が低下する可能性があります。そのような場合には、LFやHFといった電波干渉に強い周波数帯がより適しています。
また、使用するリーダーとの技術的な互換性や、設置場所との相性も重要な要素となります。読み取り角度や距離、設置の高さや向き、さらに周囲の設備との位置関係など、複数の観点から実運用を想定して相性を確認することが必要です。実際の環境下で事前に確認を行うことで、誤読や読み取り漏れといったトラブルの発生を未然に防ぐことができます。RFIDの特性を最大限に活かすには、現場ごとの「電波環境」に合わせた最適設計が欠かせません。
PoC(試験導入)での実証テストの重要性
RFIDシステムの導入前には、必ずPoC(Proof of Concept:試験導入)を実施し、実際の現場環境に近い条件下でのテストを行うことが推奨されます。理論上は問題がなくても、現場特有のノイズや障害物、機器配置、作業動線といった要素によって、通信品質や動作安定性が大きく左右される場合があります。
PoCでは、想定される運用シーンでの通信距離、タグ読み取り率、読み取りスピードなどを実測し、必要に応じてタグやリーダー、アンテナの選定を見直したり、設置レイアウトを調整したりします。こうした実証データに基づく改善を経ることで、導入後のトラブルや再設計の手間を最小限に抑えることができ、ROI(Return on Investment:費用対効果)の最大化にもつながります。導入後の成果を確実に得るためには、この事前検証プロセスが非常に重要です。
まとめ|自社用途に合った周波数帯を選ぼう

通信特性の理解が導入成功の鍵
RFIDの導入において、周波数帯の選定は単なる技術的な選択ではなく、現場環境や運用目的に直結する重要な判断ポイントです。LF・HF・UHFの各周波数帯にはそれぞれ特徴があり、「距離を優先するのか」「安定性を重視するのか」といった目的によって適した選択肢は変わってきます。
通信特性を理解し、メリット・デメリットを比較することで、導入後のトラブルやパフォーマンスの低下を回避し、長期的な運用に耐えうる仕組みづくりが可能になります。
現場環境に最適な周波数帯でRFIDを活用する
実際の導入現場では、理想的な設計がそのまま通用するとは限りません。金属・水・障害物などの存在や、作業者の動線、製品サイズ、タグの貼付位置など、複合的な条件を踏まえたうえで最適な周波数帯を選ぶことが求められます。
そのためには、PoC(試験導入)による検証を通じて、「現場で本当に使えるかどうか」を確認するプロセスが不可欠です。自社の業務特性や課題に合った周波数帯を見極め、信頼性と効率性の両立を目指すことが、RFID導入を成功へと導くカギとなるでしょう。

